『おくりびと』初日舞台挨拶
“世界が大絶賛! 追い風に乗って『おくりびと』ついに発進!!”
日時:9月13日
場所:丸の内プラゼール
出席者:本木雅弘、広末涼子、余貴美子、吉行和子、小山薫堂、久石譲、滝田洋二郎監督

遺体を棺に納める“納棺師”を主人公にした映画『おくりびと』は、第32回モントリオール世界映画祭でグランプリを受賞し、世界各国からの問合せが殺到しているという話題作。さらに第81回米国アカデミー賞外国映画賞部門の日本代表作品にも決定。最終候補の5作品に選ばれれば、『たそがれ清兵衛』以来5年ぶりの同賞ノミネートとなる。幸先よく公開初日を迎えた13日、初回上映後の舞台挨拶に主演の本木雅弘、妻役の広末涼子、共演の余貴美子、吉行和子、本作で初の映画脚本を担った小山薫堂、音楽を手がけた久石譲、そして滝田洋二郎監督が顔を揃えた。
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■滝田:「朝から満員になる映画を撮ったことがないので(笑)、感動しております。この映画を撮るまでは納棺師のことは知りませんでした。体験ももちろんしておりません。映画の準備で山形へ行き、納棺協会の方のご協力で、実際に現場に立ち会わせていただきました。その時には遺された方々の、急に泣いたり笑ったり多様な感情に圧倒されました。それと同時にその場の静寂もぜひ映画にしたいなと思いました。その時から『おくりびと』モードにうまく入れたかなと思います。そして、素晴らしい俳優さんや優秀なスタッフに恵まれ、久石譲さんの素晴らしい音楽もあり、自分の想像を越える映画になったと思います。この映画を少しでもたくさんの方に伝えたいと思います」
■本木:「公開前からいい風がたくさん吹いて、作品が勝手にひとり歩きしているような気もして、逆に不安なくらいです。実際には覚束ない人生を歩いていた青年が様々な出会いによって、ほんの一歩成長するという地味な話です。誰か1人が物語を背負って展開して行くのではなく、山崎努さんをはじめ、吉行さん、余さん、広末さんらあらゆる人との出会いを通じて、家族のこと、夫婦の危機、親子の絆ということをあらためて考えさせられます。色々なものが巧く総合的に作用していて、それをまとめた監督の力っていうのは大きなものだと思いますし、僕自身もチェロの特訓には悪戦苦闘しましたが、じわじわと頭の中に響き渡る久石さんの素敵な音楽と共に、色んな意味で巧くまとまったと思います。そして最後の仕上げは、観てくださった皆さんです。皆さんも多かれ少なかれ、なんらかの形で別れを経験していらっしゃると思います。そのことが甦ったり、もしくは、これから逝くのが近い方もいらっしゃるかもしれませんし(笑)、肉親を送るのが近い方もいらっしゃるかもしれません。また、若い方が観たら、上司との信頼関係の築き方とか、仕事への誇りとか、多分皆さんの経験の中に、自分の中に感ずるものがあるんじゃないでしょうか。これから日常生活に戻って行くときに、色んなことを考え直すきっかけになったらいいなと思っています」
■広末:「3連休の初日に、この映画に来てくださったことすごく嬉しく思います。この作品を観た後で、きっと皆さん胸がいっぱいだと思うので、それを思ったら自分も胸がいっぱいになってしまって、何を話していいのかちょっと迷ってしまいました。私もこの映画を通じて、死や生きて行くことの尊さについて、あるいは死を受け入れる姿勢だったりとか、自分も変わったと思います。この映画に出会えたおかげで、私自身のことで言えば、すごく大好きだったおじいちゃんとの別れに、悲しみだけではなくて、とてもいい形で向かい合えたと思っているので、皆さんも近くに死だったり病気だったり、そいうものがあってもなくても、この映画を通じて生きてゆくことに前向きであることを感じ取っていただけたら嬉しいなと思います」
■余:「本日はたくさんの映画の上映がある中で、『おくりびと』を選んでいただき、どうもありがとうございます。俳優は人を感動させる仕事なんですが、観終わった後、自分も感動してしまいました。死の場面がたくさんあるのですが、逆に命が喜んでいる、そんな気分になりました。わたしも既に半世紀を生き、これからどういう死を迎えようかと考えながら時間を過ごすことができました。たくさん賞をいただいたことによって、たくさんの皆さんに観ていただけるのは嬉しいです。そういう映画に参加できたことを誇りに思っています」
■吉行:「こんないい映画に出演できてとても嬉しく思ってます。私は“おくられびと”代表で参りました(笑)。お稽古の時に私が死んで寝ていたんですけど、撮影はまだ大分先だったにも関わらず、本木さんが余りにも上手になさるんですよ。これは私も真剣に死ななくてはいけないなと覚悟して撮影に臨みました。出来上がったのを観て本当に嬉しかったです。優しい映画です。自分が死ぬところもしっかり泣きました。本当にいい映画です」
■小山:「今日の皆さんのランチはフライドチキンかな(笑)。きっとフライドチキンを食べたくなられたんじゃないかと思います。僕はいつもタダでしか見てもらえないテレビの仕事しかしていなかったので、この度は1800円どうもありがとうございました。2005年の11月に山形に行き、生まれて初めて棺に入りまして、蓋も閉めていただきまして、真っ暗な中で、これから始まるんだなと考え始めました。どういう映画になるのかわからないまま、なにしろ映画をやったこともなかったので、とりあえず無我夢中で、なるべくどんよりとしたものじゃなくて、さらっとしたものにしたいなと思って書きました。それを滝田監督がさらに軽やかに切れのある演出で素晴らしい作品に仕上げていただきまして感謝しています。映画という仕事に関わってみて、本当に幸せな仕事だなと思いました。僕は“食”が好きなので、“食”のシーンをたくさんちりばめました。日頃から食べることは何かを殺すことであり、それで自分が生きていて、ほんとうに色んな食べ物の命をいただきますとい気持ちがあるんですが、今回は、本当に食べるということの尊さを知りました。日常の中で、今日は食べられるかなではなくて、何を食べようかなと迷うことの幸せを感じました。ぜひ皆さんも今夜は、白子にはまだ早いので、チキンを食べながらこの映画を反芻していただければなと思います」
■久石:「本木さんがチェロを弾かれるという話だったので、事前に曲を作らなくてはいけなかったんですが、台本を読んで色々考えて、生と死が向かい合う時の優しさみたいなことができないかと思って書きました。それを本木さんは特訓されて、プロの僕が見てもちゃんと弾いてます」
■本木:「(慌てて)フリだけですけどね。音は自分のじゃないですけど」
■久石:「いや本当に素晴らしいです。今日皆さんに聴いていただいた音楽は、全部チェロ12人でやっています。普通は弦楽アンサンブルだと、バイオリン、ビオラも入ってくるんです。最初は、チェロだけ12人、そこにピアノと若干の楽器を入れただけで、1曲だけならまだしも全編やるのはどうかなと思いましたが、監督もこのアイディアを気に入ってくれました。そういう意味では、音楽的にもすごくチャレンジしてます。もし、またこの音楽も機会があったら聴いてみてください。もちろん、本がよくて、役者さんがよくて、すべてを束ねた監督が素晴らしいからこそ、こういう映画になったんで、それがなければ僕の音楽も生きてきません。参加できたことをとても喜んでます」
さて、モントリオール世界映画祭グランプリだけでなく、中国の金鶏百花映画賞「観客賞」で、最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞を受賞し、10月には韓国の第13回釜山映画祭「A window on Asia Cinema」部門での上映も決まり、世界各国で注目されている『おくりびと』ですが、英語のタイトルは“Departures”といいます。その海外向けポスターをパネルにしたものに本日登壇いただいた皆さんにサインをしていただきました。初日に来ていただいたお客様の中からお一人にプレゼントさせていただきたいと思います。
■本木:「モントリオールの受賞会見用に2、3用意されたもののうちの一つということで、希少なものらしいですよ」
(ここで本木さんと広末さんが座席番号を抽選し、ラッキーな観客の方にパネルがプレゼントされました)
最後に、本木さんと滝田監督から観客の皆様に一言ずつお願いします
■本木:「この作品がこの先どう育って行くかは、皆さんの手に委ねられております。自分が“おくられびと”になる頃、老いた自分が、かつての名作としてテレビ放映され、(突然、老人風に)ああ、あんな仕事もやったなぁ(笑)、なんて観れるといいなと思っています。そのためにもぜひ多くの方に応援していただかねばなりませんので、皆さん、ぜひ宣伝部長としてよろしくお願いします」
■滝田:「この映画は死をテーマにしていますが、生きるための映画だと思っております。僕自身もいつまでも“おくりびと”の側でいたいと思っております。そこでいっぱい映画を撮って、皆様にも元気になっていただいて、ずっと“おくりびと”のままでいていただきたいと思います。幸いにも海外でも評価をいただいたということなんで、国を問わずたくさんの方に観ていただきたいと思います」

芸術的な納棺シーンだけでなく、飲み食いするシーンもかなり魅力的な本作。さすがは食通で知られる小山薫堂さんの脚本だけあります。山崎努さん演じるNKエージェント社長が白子を炙って塩を振って食すのも、ウィスキーのお湯割も、そしてフライドチキンさえもそれはそれは美味しそうなのです。人間は食べて生きている。食べることは生きている象徴なのだということを実感できる映画でもあるのです。
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『おくりびと』
配給:松竹
公開:2008年9月13日、全国ロードショー
公式HP:http://www.okuribito.jp/
©2008 映画「おくりびと」製作委員会
あらすじ
チェロ奏者の道を断念した大悟が、妻の美香を連れて東京から故郷の山形に戻ってくる。早速、NKエージェントという会社に職を得るが、それは遺体を棺に納める納棺師の仕事だった。戸惑いながらも社長の佐々木に指導を受け、新人納棺師として働き始める大悟だったが、美香には仕事の内容を告げられずにいた。
プロフィール

本木雅弘
1965年埼玉県生まれ。81年にTVドラマデビュー。「シブがき隊」の“モックン”として活躍したアイドル時代を経て本格的に俳優業に進出。89年『226』で日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。92年『シコふんじゃった』で同賞最優秀主演男優賞受賞。主な出演作に『RAMPO』『スパイ・ゾルゲ』『夜の上海』など。98年にはNHK大河ドラマ「徳川慶喜」に主演。09年放映予定のスペシャルドラマ「坂上の雲」でも主役を務める実力派俳優。
取材・文:齊田安起子












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