『チェ 28歳の革命』×『チェ 39歳 別れの手紙』プレス+学生合同来日記者会見
悩める日本の学生に届け!デル・トロ&ソダーバーグの“ゲバラ流”知的で熱いメッセージ
日時:12月18日(金)
場所:明治大学アカデミーホール
出席者:ベニチオ・デル・トロ、スティーブン・ソダーバーグ監督

その死から40年以上の歳月を経た今も尚世界中の若者の憧れであり続ける20世紀最大のカリスマ、チェ・ゲバラの生と死の真実を描いた『チェ 28歳の革命』と『チェ 39歳 別れの手紙』の2部作がいよいよ2009年の年明け早々日本公開となる。それに先駆けて監督のスティーブン・ソダーバーグと、本作の迫真の演技でカンヌ国際映画祭主演男優賞に輝いたベニチオ・デルトロが来日し記者会見を開いた。しかも今回は、世界を変えようとしたゲバラの志の高さやとことん信念を貫く姿勢を、未来を担う若い世代にこそ知ってもらいたいという趣旨から、大学を会場に選び、後半は学生からの質疑の時間を設けた特別な会見となった。
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ラウル・カストロ役にブラジル人俳優を起用したのはなぜですか?
■スティーブン・ソダーバーグ(以下:ソダーバーグ):「もっと多くのキューバ人俳優をキャスティングしたかったのが本音なんだけど、キューバの市民権が必要だったり法的規制があってかなわなかった。確かに残念なことだけど、僕らはロドリゴ・サントロの演技を気に入っていたし、彼はラウル・カストロにも似ていたからね」
『チェ 28歳の革命』がハバナに入る前に終わっているのはなぜですか?
■ソダーバーグ:「この質問が出たということは、僕の映画づくりは失敗したということかな(笑)。僕らがチェの人生を描く上で中心に据えたのは二つの軍事行動なんだ。だから、その間の細々とした出来事はあまり重要ではないんだ」
デル・トロさんに伺います。チェ・ゲバラとご自身と共通点はありますか?
■ベニチオ・デル・トロ(以下:デル・トロ):「チェは真実を求める人だった。僕らフィルムメーカーはチェについて学んだことをどう映画にするかに取り組んだわけだけど、その姿勢がチェと通じる部分だと思う」
チェを演じる上でこだわった点は?
■デル・トロ:「この映画はプロデューサーのローラ・ピックフォードに僕がチェに似ていると言われたことから始まったプロジェクトだけど、チェに似せることにこだわっていたら正気を失っていただろうね。声や所作を真似ることは可能だけど、彼は実在の人物なわけだから、彼になることは不可能なんだ。彼についてリサーチして学んだことを自分なりの解釈で投影しただけ。あとは監督と編集に任せたよ」
2部作ではありますが、撮影のスタイルも物語の構成も全く異なっています。それはなぜですか?
■ソダーバーグ:「監督には二つのタイプがあると思う。一つは常に同じスタイルで撮影する監督。もう一つは、まずストーリーを選び、それをどう語るかを毎回選択するという監督。僕自身は後者だと思っている。この2部作をつくる上では、チェ自身が残した文章の声を踏襲したいと考えたんだ。キューバ革命について書いた本では、革命の勝者の成功の力学を俯瞰したような書き方をしているから、その部分は通常の映画の撮り方がいいと思ったんだ。これに対してボリビア日記では、距離を置いて全体を見るという姿勢はまったく欠如していて、彼自身、明日何が起きるかまったくわからないという状況だった。だから映画もハラハラしたり、脅威を感じさせるスタイルがいいと思ったんだ。これは元々一本の長大な作品であって、その中の二つのパートなんだ。常にコントラストを考えて撮っていた。たとえばパート1で暖色を使ったら、パート2では寒色を使うとか、そのシーンのムードを再現することを考慮したんだ」
デル・トロさんに伺います。リーダーに必要なものは何だと思いますか? また、ハリウッドのリーダーになりたいと思いますか?
■デル・トロ:「リーダーにはまず人の言葉に耳を傾けることが必要だと思う。そして、すぐに行動に移すこと。ええっと、僕がハリウッドのリーダー? いいんじゃない(笑)」
もしチェ・ゲバラがこの映画を観たらどんな感想を持つと思いますか?
■デル・トロ:「僕はリーダーだからね(笑)、まず彼の言うことに耳を傾けるよ。映画を気に入ってくれたらなと思うけど、少なくとも僕らが真実を掘り起こして歴史に忠実に描いた努力は認めてくれるんじゃないかな。実際にチェを知る人々に会いに行って話を聞いたり、彼が書き残したものを読み込んだりね。そういう努力に敬意を払ってくれれば嬉しいよ」
■ソダーバーグ:「もしチェが生き返ったら、この映画を観るよりもっとましなことをしてほしいな。東京に来たらリッツ・カールトンに泊まるするように勧めるね(笑)。チェが今の世界を見てどう思うだろうかというのは確かに興味深いことだよ。この映画の中で、そういうシーンを入れようというアイディアもあったけど、機能しそうになかったので諦めたんだ」
(ここからは学生からの質疑を受け付ける時間。明治大学0Bである大仁田厚がスペシャルゲストとして司会をつとめるために登壇)
■大仁田:「(学生に向けて)積極的に質問してください!」
(経営学部3年男子)お二人は20歳頃、どんな夢をもって、どんなことをしていましたか?
■ソダーバーグ:「映画をつくり始めて7年ほど経っていたかな。大学には一切行ってないんだ(笑)。とても幸運なことに、若いうちに自分が本当に何をしたいのかがわかっていたし、それを理解してくれる家族もいた。僕はルイジアナで育ったからエンタテインメント業界に知り合いなんて1人もいなかった。だから一生懸命やるしかなかったけど、いつかチャンスが巡ってくると信じていたんだよ」
■デル・トロ:「僕はちょうど俳優になろうと思い始めた時期だった。大学で演劇のクラスをとったのがきっかけで、好きなものに出会ったんだ。皆さんにも好きなものを見つけてほしいと思う。夢を追うには最適な年頃だからね。ただ、僕の場合、最初は家族の支持は得られなかったけど。でも、好きなことには突き進むしかないんだよ」
(文学部3年女子)ゲバラは最後まで信念を貫いた人でしたが、監督の映画をつくる上での信念とは何ですか?
■ソダーバーグ:「常に観てくれる人にとって価値ある時間になるような映画をつくりたいと思っている。それは作家が自分の本を読むことで読者に変化を感じてほしいと思っているのに似ていると思う。それと同時に、僕は芸術の役割についてもよく考えるんだ。人は物語を語ることが好きだね。その物語によって世界や人生に対処してゆく力を得るわけだけど、果たして芸術だけでいいのだろうかと。もっと他に物語を語る有効な方法はないか。もっと人々にインパクトを与えられる方法はないかってね。ただ、今の僕にあるスキルは映画をつくることだけなんだ。もし他のことが見つかったらそっちをしたいと思う」
(4年女子)昔は日本にも学生運動という革命に近い活動を行っていた学生もいましたが、今はクールなポジションにいる学生が多いと思います。そんな学生たちにこの映画をどう観て、どう変わってほしいと思いますか?
■デル・トロ:「学生の皆さんに言いたいのは、こうでなくてはいけないなんてことはないってことなんだ。もし自分で正しくないと感じたら、黙っていないで立ち上がって声を上げてほしい。この世界はまだまだ変わることができると思うよ。この映画から何かを学んでほしいな。チェのことでもいいし、キューバの歴史やラテン・アメリカのことでもいい。この映画が皆さんを触発することになればいいと思う」
■ソダーバーグ:「変革を起こしたかったら行動を起こすことだよ。それには大事なことが二つある。一つは一人でやらずに同士と呼べる仲間を見つけること。もう一つは、何かに反対するだけでなく、代替案を示すこと。60年代の運動にはそれが欠けていたと思う。体制に反対する素晴らしいエネルギーがあったのに、結果として体制側に飲み込まれて、経済的な活動に流れてしまったんだ」
■大仁田:「そろそろ最後の質問ですが、(学生の間に、赤いゲバラのTシャツを着た姿を目にして)あれ、石井選手じゃないですか?」
■石井慧:「はい。先日、柔道界で自分は一革命を起こしました。そして、今、大学を追われここにたどり着きました(笑)。お二人は革命を起こしたことがありますか?」
■ソダーバーグ:「まだないね(笑)」
■デル・トロ:「小さな革命ならあるよ。私生活では色々起こして来たかな。中でも、俳優になると決めて家族に反対されたときが印象深いね」
北京五輪金メダリストの石井慧は柔道家からプロ格闘家へ転向し、米国進出を表明したばかりとあって、ハリウッドの大物監督&俳優コンビに「応援してください」とちゃっかりお願いしていました。
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『チェ 28歳の革命』
『チェ 39歳 別れの手紙』
配給:ギャガ・コミュニケーションズ×日活
公開:『チェ 28歳の革命』2009年1月10日(土)より日劇3ほか全国にて
『チェ 39歳 別れの手紙』2009年1月31日(土)より日劇3ほか全国にて
公式HP:http://www.che.gyao.jp
■あらすじ
貧しい人々を救いたいと南米大陸を旅する若きアルゼンチン人医師エルネスト・ゲバラ(通称チェ)は、独裁政権に苦しむ故国キューバの革命を決意するフィデル・カストロと意気投合し、軍医としてゲリラ軍に加わる。キューバ革命を成功に導いた後も、理想の世界を築くために奔走し、やがて、ボリビアで新たな革命に挑む…。
■プロフィール
ベニチオ・デル・トロ
1967年2月19日、プエルトリコ生まれ。カリフォルニア大学サンディエゴ校在学中に演劇に目覚める。テレビシリーズへの出演を経て、ソダーバーグ監督の00年『トラフィック』でアカデミー賞助演男優賞ほか演技賞を総なめにする。03年の『21グラム』(03)でも同賞にノミネートされ、本作でカンヌ国際映画祭主演男優賞受賞。他に『ユージュアル・サスペクツ』(95)、『バスキア』(96)、『ラスベガスをやっつけろ』(98)、『スナッチ』(00)、『プレッジ』(02)、『シン・シティ』(05)など出演作多数。
スティーブン・ソダーバーグ
1963年1月14日、米国ジョージア州生まれ。89年の『セックスと嘘とビデオテープ』でカンヌ国際映画祭パルムドールに輝き一躍注目を浴び、アカデミー賞脚本賞にもノミネートされる。00年には『トラフィック』と『エリン・ブロコビッチ』の2作品で同賞監督賞にダブルノミネートされ、前者で受賞。主な監督作に『アウト・オブ・サイト』(98)、『イギリスから来た男』(99)、『オーシャンズ11』、『ソラリス』、『フル・フロンタル』(02)、『さらば、ベルリン』(06)などがある。
取材・文:齊田安起子












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