『イサム・カタヤマ=アルチザナル・ライフ』片山勇、牧野耕一監督インタビュー

抜群のクオリティと手作りへのこだわりで、Oasisのリアム・ギャラガーやデビッド・ベッカムを始めミュージシャンやアーティストたちなどに絶大な人気を誇り、世界の超一流バイヤーたちの間にもその名を轟かせる注目のレザーブランド“BACKLASH”。そのスーパー・ブランドを率いる職人気質のオーナー兼デザイナー、片山勇。商品そのものの魅力だけでなく、彼自身の持つ人間的魅力で多くの人々に支持され、信頼されるこの男は何者なのか…?これまでメディアにほとんど出ることのなかった伝説のカリスマの実像に迫る刺激的なアーティスティック・ドキュメンタリー。
今回は本作の監督を務められた牧野耕一 氏、そして主演の片山勇 氏にお話を伺いました。
_____________________________________
片山さんに質問
普段あまりメディアに露出されない中、今回映画に出演し、映像に映る自分を観て如何でしたか
■片山勇(以下、片山):「編集の段階から60回以上は観ているのですが、最後にスクリーン試写会で観たときも自分が出ているのにも関らず泣けました。すごく良い作品仕上がっていると思うし、良い作品に参加させていただいて光栄です」
恥かしさはありますか?
■片山:「それは既に越えましたね(笑)」
牧野監督に質問
全編を通して色味のかかったフィルターをかけたような映像ですが、そこには何か意図があるのでしょうか
■牧野耕一 監督(以下、牧野):「目に見える色味ってありますよね。この部屋だったらちょっとアンバーっぽい感じで落ち着きのある色味とか。ドキュメンタリーって通常だとそのまんま撮影し伝えますが、僕はそれを手抜きだと思うんですよ。それは劇映画に影響されているからだと思います。
僕は好きな人しか撮らないし、それを映画にするわけだからその人をより綺麗に見せるために「あ、今日は気分悪そうだな」と思ったらフィルターを青にしたりとか、気分でどんどん色を変えていくんです。それは編集のときにパソコンで色味をいじるのではなく、撮影の時点でカメラの色味を変える機能なり、直接レンズにフィルターをかけて撮影しています。
それで色は変更しない。これは僕のやり方で、自分の決め事としてやっています」
撮り直しが出来ない事へのプレッシャーはありますか?
■牧野:「そういうプレッシャーは全然ないですね。失敗しても良いと思うんです。逆に構えて撮っていると失敗するんですよ。だから常にリラックスして撮影しています。片山さんとは本当に私生活でも仲が良く、尊敬できる先輩で、カメラを向けても向けなくても基本片山さんは変わらないんですよ。そこはかなり重要な事でした。
「青くするのは狙っているように思える」「もうちょっとサラっと撮れないの?」とか良く言われるんです。でもドキュメンタリーだとしてもエッジの効いた色味があってもいいと思うんです。革ジャンもそうで、同じものでもヨーロッパで見る革の色味と日本で見るのでは違うんですよ」
終始カッコイイ片山さんですが、一番最後にかっこ悪い片山さんが出て来てきますよね。その撮影はどのように行われたのでしょうか
■牧野:「例えば美女に出会ったとします。僕は絶対に彼女にしたいと思うでしょう! そして美女の家にいけたとします。そしたら部屋が汚かったとか、鼻毛がちょろっと出てたとか・・・、でも僕はさらにそれでその人を好きになるんですよ(笑)。そんなのが人間臭くて良いと思うんです。
僕は友人としてつき合わせていただいてますけど、革職人の顔、社長としての顔もあります。様々な顔がある中で、僕は一番かっこ悪い部分を上手く撮影する事には自身を持っています。全てはシンパシーでしかなく、共感出来ないと好きにはなれませんよね。「えええ・・」と思った瞬間に興味はなくなり終わりなんです。
ようは上映時間の中で片山さんを好きになってもらえば万々歳なわけで、ずっとファッション雑誌のモデルのようなキメた映像だったら観る側も疲れちゃいますよ。だからかっこ悪いくとも、誰しもが共感できる様な姿も入れました」
最近では少なくなった、男同士の絆が多く描かれていると思いました。そういった人を巻き込んで、仲間を作るコツみたいなものがあれば教えてください
■牧野:「それはもう是非片山さんに聞いてください。人騙すことに関しては・・・。冗談です(笑)」
■片山:「あはは(笑)。それは考えた事なかったですね。巻き込むというよりも、監督にも言われたのですが「意外に片山さんって人の話聞きますね」とか周りに言われるんですよね。自分がその人に興味があるから酒でも飲んで話しを聞くのですが、それに対して「自慢話でもいから、良い話し聞かせてくれ」とはいいます。すごい笑顔で自慢されたら僕も嬉しくなっちゃうし、俺も頑張ろう!と思っちゃいますよ。
売れてない頃から10年以上付き合いのある友人もいて、一生懸命音楽・ファッションについて熱い話し合いもしました。みんなで上がって行こう!と思う気持ちは強かったですね。
そうすると、どんどん相手の好きな物事が分かってくるし、自分自身の幅も広がるんですよ。とにかく人と話すのが好きですね。それが僕のやり方ですね。仲間を作るコツかわからないけど(笑)」
■牧野:「片山さんがおっしゃった通りなんですよね。僕らの仲間って基本自分の身の上話からするんですよ。普通は初対面の人には話さない事ですよね。「俺は!!」と話されたら、誰だって引きますよ(笑)。
でも、僕らはそれに抵抗が無いんです。僕らの集団はすごいコミュニケーションとっているように見られるかも知れないけど、実は自分の話したい事話しているだけなのかもしれません(笑)。本当にあくの強い奴らで、すごい喋るか、一言も喋らないかの両極なんです。ただ絶対に同じ“場所”にいるんですよ。その場にいるって事は一番重要な事なんだと思います。そこで何かを目撃し共有しているわけですから。
片山さんはその中心で「俺は!!」と話す事もあれば、誰かの話を熱心に聞いています。アドバイスをする人って多いと思うんですね。説教臭い先輩とか「そんなこと教えてもらわなくてもいいよ!」って思うようなことを、安い焼き鳥屋で(笑)。そういうのを社会人なら経験していますよね。
片山さんの凄いところは「ところで、それ幾らいるの?結局は金だからさ」と聞いて、相手が本気ならお金を出しちゃうんですよ。何%が片山さんに入るとか、返済はいつだとか、そんなの一切なしで。兄弟のように付き合っている仲だから!って理由だけで。僕は最初「正気か?」と思ったんですよ。血の繋がりの無い他人にお金貸すんですから。そのとき片山さんが僕に「中途半端に人を信用するから騙されるんだよ。本気で信用されていたら人は中々人を騙せないもんだよ。どっちかしかないんだ」と言ってくれたんですね。
片山さんは強持てに見られそうですけど、本当は良心の塊みたいな人です。それが今回本作を撮ろうと思ったキッカケでもあります。人間としての力がある人で、縁の下の力持ちです。今の時代、片山さんのような方は少ないと思う。こういう人をもっと表に出していかないとダメなんです。だから僕らの集団で片山さんを神輿に乗せて担ごうと思いました。
協力してくれた方々にギャラを払っていたら、大変な事になると思います。製作費なんてとっくにオーバーしていますし、主題歌はGLAYが担当していますからね(笑)。
片山さんの人柄があってこその本作だし、友情で成り立っている映画です」
お二人は凄く仲が良いですが、一人の男として見たお互いの印象をお聞かせ下さい
■片山:「10年付き合って、職種・歳は違えど男としての考え方は凄く共感しています。2年近く本作を一緒にやってきて、生き方も勉強になったし、自分自身も変われたんですよね。牧野監督はすごく不器用なんだけど、芯は太いしそれを変えないので、そこが僕のハートに来ました。これが男の生き方なんだろうなと思います。
本作で自分自身の立ち位置を見直す事ができましたし、これをきっかけに父親に一歩近づけたような気がします」
■牧野:「BACKLASH(片山氏の革ブランド)のスタッフが「片山さんは越えられない壁」って言ってるのですが、僕も一生かかっても越えられない壁があるとしたら、それは片山さんだと思っています。
僕は先輩への憧れが相当強くて、この喋り方も、座り方も、酒の飲み方も、タバコの吸い方も、バイクのひき方も・・・、全部先輩のマネです。人間って模倣の生き物じゃないですか。そういうマネは70歳になってもやって行きたいですね。
そういう意味で超えられない存在がいるっていうのは、すごく幸せな事なんだと思います。今の若い人達と付き合って思うのは、そういうのを自覚すらしていない人が多い。最初から越える気が無いとかね。片山さんにはずっとカッコいい先輩であってほしい思っています」
逆に仲が良すぎて撮影に支障が起きたことはありましたか?
■牧野:「仲が良いからこそなのかも知れませんが、僕らのなかで殴り合いのケンカは仕事上でもプライベートでも日常茶飯事にようにあるんですよ。この歳になって大乱闘になるんです(笑)。そこにカメラがあるか無いかだけで、毎日飲んでいたら3日に一回はありますね。
撮影中も片山さんとケンカしましたけど、次の日には片山さんから笑顔で「オッス」と言ってくれるので、ホッします(笑)。悪い方向には持っていかないんですよね。支障という言葉を使うなら、そんな事くらいでした」
本作のメッセージはなんでしょうか
■片山:「まずは多くの若者に観ていただきたい。映画監督とかデザイナーになろうとしている人達にはハマる映画なのかもしれません。僕らがすごくがむしゃらにやっている姿を観客が観て、何か一歩前に出れるんじゃないかと思います」
■牧野:「メッセージというか技術論になるかもしれませんが、僕の映画の特徴として“人生そのものがストーリーとして満ち溢れている人を撮る”というのがあります。その人は絶対に新しいストーリーを生み出すし、それを信じています。
それとカメラワーク。僕は手持ちでしか撮影しません。それは親から貰ったこの身体で動ける範囲で、自分の目の高さ以上の撮り方をしたくないからです。そうしないと愛情を持ってその人を切り取れないと思うので。
劇映画を撮ろうとしている若い人達には「妄想のような劇映画を撮るのだったら、まずは修行として恐ろしい人をドキュメンタリーでもいいから追いかけてみろ!」と言いたい。僕はそういうのを修行でやっていましたが、これがいつの間にか自分の売りになっていました。
ただ手持ちでもフレームを意識して、どんな場面を切り取っても一つの写真になるような構図にはしています。でも良い映画だったらそんなフレームなんて意識しないし、役者の本名も監督の名前も忘れちゃうと思うんですよ。
片山さんは凄く魅力のある人だし、逆説的かもしれないけど、僕の名前も頭に入ってこないほど片山さんに集中して観てもらえたら嬉しいです」
今後お二人が挑戦してみたい事は?
■片山:「ブランドとしては今後も変わらず色んな事に挑戦するのみですね。今回こうやって映画が公開される事になり、もう一度映画をやってみたいと思いました。なんかこれで終わりだと寂しいんですよね(笑)。ここまでスタッフとやってきたわけですし、監督としても挑戦したいですね」
■牧野:「僕は映画監督の仕事を通じて、片山さんのような凄い方々に出会い、色んな夢を見させていただきました。僕自身まだまだ新たな事に挑戦できると思っていて、少し大げさかもしれませんがサッカー選手だって、医者にだってなれるかもしれない。そんなとんでもない夢はずっと持っていたい。そして、それが叶うと信じていたいです。
年甲斐も無くとか、年相応とか、そういうのは嫌なので、常に挑戦し続けたいです」
_____________________________________
『イサム・カタヤマ=アルチザナル・ライフ』
配給:トルネード・フィルム
公開:2009年7月25日
劇場:シネマライズ、ライズXにて公開
公式HP:http://www.cinemacafe.net/official/artisanal-life/
(C)2009 BACKLASH AMENICAM












コメント